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東洋医学の基礎知識

東洋医学とは

東洋医学と呼ばれるアジアの伝承医学には代表的なものとして、中国医学、インド医学、チベット医学があります。日本には貿易との関係から中国医学が伝えられ、室町時代の頃から漢方、鍼灸が実地医療として行われていました。それが明治時代になって西洋医学が導入されると、これまで医学の主流だった中国医学が、古臭いものとして片隅に追いやられてしまいました。

しかし、昭和40年代頃から健康ブームと共に再び脚光を浴びるようになり、昭和51年に多くの漢方製剤が健康保険の適用を受けるようになったのを機に一挙に広く使われるようになりました。

今なぜ東洋医学なのか

現在の日本においては、食生活や環境衛生は十分に満たされ、それらの不足から起こってくる疾患は姿を消しました。また、結核、肺炎などの感染症も抗生物質のおかげで、恐い病気ではなくなっています。代わって問題になってきているのが各種のアレルギー疾患や糖尿病、高血圧などの成人病、老化による骨、関節疾患です。

これらの疾患は栄養過多や環境因子の悪化、ストレス、老化などが増悪因子となっており、西洋医学だけで対処することが難しいということが医師及び患者の間で問題になってきました。また、西洋医学は体の中の病んでいる一部分のみ見がちであるため、他の部分に副作用が出たり、全体のバランスを崩したりというような不利益なことが報告されるようになってきています。そこで、体全体を診て治療する東洋医学が注目されるようになってきたのです。

中国医学とはどんなものか

中国医学には大きく分けて、漢方、鍼灸、気功の三つの方法論があります。漢方は植物、動物、鉱物などの自然界に存在する素材を用いて、伝承されてきた経験論に基づいて、薬を作り、投与します。本来は煎じて飲むのですが、最近は顆粒状のエキス剤が主流で、多くの疾患を治療することができます。また、鍼灸は体のツボと呼ばれる所を直接刺激することで、筋肉や腱を弛緩させ、治療していく方法で、特に骨、関節疾患には効果的です。気功は天地にあふれる気と呼ばれるエネルギーをもたらす方法です。虚弱な人や自律神経失調症などに特に効果があります。

東洋医学は西洋医学のように病気を完全にやっつけてしまおうというような考え方ではありません。もちろん完治する疾患は多いのですが、たとえ難しい病気であっても、病気と共存しながら、その人にとって最もよいコンディションに体を整えてやろうという考えのもとに、様々な方法論を使っていきます。そのため、体全体を診てその人の体質診断をし、薬を決めてゆきます。ですから、風邪だからこの薬ではなく、この人の風邪だからこの薬ということになり、他の人の風邪だとまた別の薬ということになります。

漢方とはどんなものか

前にも述べたように、漢方の形状は煎じ薬、エキス剤が主流で、生薬を粉にすりつぶして蜂蜜と混ぜた丸錠や薬用酒の類もありますが、一般的ではありません。最近は漢方ブームでムードに惹かれて一度飲んでみようかと専門医の所に来る人が増えました。この中には、漢方がカプセルとか錠剤と思っている人もいるし、量の少ない、甘い薬と考えている人もいます。しかし、なにぶん木の根や草、花などが主材料であるため、現代の西洋医学の薬剤に慣らされた口や舌には決して飲みやすい味ではありません。でも、漢方というのは伝統医学であり、これが古来伝わった薬の本来の姿なのですから、より自然なものを口にしていると思って飲んでほしいのです。飲んでいるうちに漢方独特の風味が好きになる人も多くいます。

一般的に、漢方はすぐに効果が出ないと思われがちですが、決してそうではなく、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などには、かなり即効性があります。そのためには量を多く必要とする場合もあります。長期間飲み続けて大丈夫かという心配の声も聞かれますが、それが漢方の特徴で、長く飲むことで体の体質を変えていくことができます。このようなやり方は西洋医学にはないもので、いわゆる予防医学に近い考え方ではないかと思います。

東洋医学と日常の養生

世界的にも金持ち国と言われるようになった日本は、この数十年の間に食生活も、生活環境も著しく変化しました。いまや空腹を満たすために食べるのではなく、味覚を楽しむために食べるようになり、甘い、脂肪分のたっぷり入ったうまみの濃い食物ばかりを幼い頃から食べ続けている人が多くなりました。また、エアコンディショナーが普及し、夏の暑い時にも汗をかかず、冬の寒い時にも薄着で過ごしています。歩く距離も減り、椅子やベッドで生活するようになりました。生まれた時からこの環境しか知らずに育った子供たちに今、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息や肩凝り、腰痛、視力障害、無気力児童が増えてきています。

たとえ短期間に環境が変わっても、遺伝子レベルで受継いできた日本人としての体はそう簡単には変わるものではありません。もともと千年以上もの間、肉類、乳製品を食べなかった日本人は、脂肪や乳成分を分解する消化酵素が少ないし、消化力も弱いと言われています。そして、食生活の変化に対応しきれない結果、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、気管支喘息などのアレルギー疾患が多くなってきているのです。

一方、生活環境の変化に対応しきれない結果として、子供たちの間に肩凝り、腰痛、視力障害、無気力児童がふえているのです。これらの子供たちは暑くても汗が出なかったり、逆に過剰に出過ぎたりして、うまく体温調節ができない傾向にあります。また、概して姿勢が悪く、四肢がクモのように長く、顔が小さく、骨の 細いヒョロとした日本人離れしたタイプに多く見られます。

このように、急激な環境の変化に動物としての人間の体が順応できないために起こっている疾患が数多く見られるようになってきています。東洋医学は病める人がどうすればより自然な治癒力を取り戻せるのかを考えながら治療していく医学なので、日常の養生とは切り離せません。ふだんの食生活や生活環境の中で、それぞれが健康に留意し変化しようと努めることが、東洋医学の考え方とも合致するのです。ですから、私が今まで経験し、又多くの患者さんから教えてもらった範囲の中で、日常の養生法についての指導もしていきたいと思います。

最後に

私が東洋医学に共感したのは、それが診断医学や検査医学ではなく、真に治療というものを目指した医学だったからです。世の中には病名の付けられない病気や、診断はついても年のせいで、治療法はありませんというような疾患がいくつもあります。たとえそのような疾患であっても、個々の患者を診るという視点に立つ東洋医学では何らかの治療法を模索することができます。このように、病気を診るのではなく、病気になった患者を診るという姿勢が東洋医学にはあるように思います。

以上に述べたように、医者と患者の相互理解がなければ、東洋医学の治療は成り立ちません。私も分かりやすく説明するよう努力しますので、皆さんも医者に頼りきるのではなく、自分もその病気を理解し、治すための努力をしていただきたいと思います。医者と患者が共に病気と上手にお付き合いしていくというのが、一番理想的な姿ではないでしょうか。