人は一生の1/3を睡眠に費やしています。睡眠がなぜ必要かはまだ解明されていない謎ですが、睡眠なしで生きていけない事からも、脳にとっての休息の意味がある事は確実です。ヒトは長い進化の過程で太陽の光と関係した固有のバイオリズムを作り出しています。日中は交感神経が優位で、体温、血圧、脈拍も高く、活動しやすい体になっています。一方夜になると副交感神経が優位となり、生命活動は低下して眠りへと入っていくのです。最近ではこの日光と関係したリズムにメラトニンという脳からのホルモンが深く係わっていることも明らかになってきました。
 東洋医学でも自然界には陰と陽があり、人体もその影響を受けていると考えています。日の出と共に人体の陽は強くなり、気は体の外側(同じ陽に属する)をめぐるので、身体は活動しやすくまた外からの邪の侵入を阻止することができます。日の入りと共に陽は弱まり、かわりに陰が強くなり、気は体の内側(陰に属する)の五臓六腑をめぐり、身体は眠りながら内臓にも休息を与える訳です。このように身体の気の流れが、太陽の光がもたらす陰陽のバランスに強く影響を受け、睡眠のリズムを作っています。しかしストレスなどで自律神経が興奮状態になると、身体の陽が強くなり過ぎて、夜になっても気が外に留まったままで、体の内側に入っていけなくなり眠気がこなくなります。老化や五臓六腑の障害も陰陽のバランスを大きく崩すので、やはり不眠の大きな原因です。また気血水は共に動いていくので、更年期や月経にまつわる血の病や胃腸障害などの水の障害を起こすと、同時に気のめぐりも障害されて不眠がおこってきます。人間は太陽の光の影響を受けて独自のバイオリズムを形作っていくという数千年も前の東洋医学の考え方は、近代になって西洋医学が解明した睡眠の考え方とほとんど同じだったといっても過言ではありません。